乾燥して暑くなってくる時期になると、コンクリートや家の壁などでもぞもぞ見かける赤い虫。アリかな?と思いきや、潰れると赤いシミになったり、家の中に忍び込んできたりするので「気持ち悪い」と感じたこともあるのでは?
実はこの小さい赤い虫は「タカラダニ」というダニの一種です。基本的には人に害のないダニですが、目立つ赤色と室内に侵入してくることから、発生時期になると「不快」と感じ、保健所への苦情が多くなるようです。
今回はそんなタカラダニの生態と駆除、予防法についてお伝えします。
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目次
赤いダニの正体「タカラダニ」の生態と特徴
タカラダニは世界で約40種類以上確認されていますが、日本で確認されているタカラダニは「カベアナタカラダニ」です。
正式には、ダニ目前気門亜目タカラダニ科アナタカラダニ属のカベアナタカラダニBalaustium murorum(Hermann)に分類され、「アカダニ」と呼ばれることもあります。
タカラダニは以下の様な特徴があります。
引用:京都府
- 体長0.3~1㎜
- メスのみの単為生殖
- 建物の壁、コンクリートに生息
- 5,6月(3月頃から徐々に発生)に発生
- 洗濯物、布団につくこともあり、屋内に入ってくることもある
- 高温に強い
- 体液で繊維を赤く染める
- 人は刺さない
- 体液が皮膚につくと皮膚障害・皮膚炎になることがある
- エサ…コケ、花粉、アブラムシなどを食べる
- 産卵…屋上・ベランダの壁の隙間・亀裂、凹凸のあるところ
- 大量発生することがある
- 基本的に弱い
5.6月に発生ピークを迎え、アスファルトや公園などいろいろなところで見かけるようになりますが、7月には自然といなくなります。気にならなければ放っておいても問題ありません。
●タカラダニの名前の由来
タカラダニ科の多くは幼虫期にクモや昆虫類に寄生します。背中に赤いダニがくっついて宝物を抱えているように見えることから「タカラダニ」と呼ぶようになったと言われています。
しかし、すべてのタカラダニ科の種がそうではなく、カベアナタカラダニを含むアナタカラダニ属のように、寄生せず、自由生活をしている種もいます。
また、カベアナタカラダニの名前のアナは「壁の穴」ではなくウルヌラ(urnula)と呼ばれる穴を持っているという特徴からそう呼ばれるようになりました。
温かくなるといろんなところで見かけるね
タカラダニはどこで見かける?
タカラダニは、ベランダや屋上の壁面、コンクリートブロックの上、アスファルトの上など、凹凸のある場所で見かけられることが多く、大量発生することもあります。1,2匹みかけると、割と近くに数10匹ほど見かけることが多いです。
アレルギーの原因となるチリダニや、ダニ刺されの原因となるツメダニよりも、体が大きく0.3~1㎜程あり、赤く目立つ体のため見つけやすく、肉眼でもみることができます。
タカラダニの害は?人を刺して痒くする?
タカラダニは潰れたときが厄介なんダ!
基本的にタカラダニは人を刺すことはありません。ダニだから人を刺すのでは?と不安に思う方もいるかもしれませんが、人に直接的に害を与えることはありません。
ただし、実験で、タカラダニの体液を皮膚に接触させたところ、被験者の皮膚に赤い皮疹ができたという結果がありました。タカラダニ自体が何かをするわけではありませんが、タカラダニを駆除する際には、手で直接潰したり、潰したタカラダニの体液が皮膚につかないように気を付けましょう。
- 洗濯物や布団にくっついて潰れると赤いシミをつくる
- 室内に侵入してくる
ので、駆除をしたいと思う人もいますよね。ただし、屋外であっても潰してしまうとタカラダニの体液が付着して、ぽつぽつとした赤色がく目立ってしまいます。色残りが気になる場所では、水で流したり、掃除機で吸い取るなど、後が残らない方法をとるとよいです。詳しいタカラダニの駆除方法は後述します。
体液が皮膚につくと、皮膚を炎症させる?
子どもが潰しちゃわないように気をつけないとっ!
潰したタカラダニの体液が皮膚につかないようにしたいネ!
実験で、タカラダニの体液を皮膚に接触させたところ、被験者の皮膚に赤い皮疹ができたという結果がありました。タカラダニを駆除する際には、手で直接潰したり、潰したタカラダニの体液が皮膚につかないように気を付けましょう。
潰したダニを24時間接触した被験者に赤い皮疹が生じた。ダニの体液が皮膚障害を発生させたと思われた。ダニを潰してその体液を皮膚に付けないよう注意する必要がある。
引用:カベアナタカラダニの短期接触による皮膚障害発生の可能性(大野正彦・花岡曝・関比呂伸・大貫文)
タカラダニを駆除するには?
タカラダニを潰さないように気を付けて駆除しなくちゃ!
タカラダニはそんなに強くないから、意外と簡単に駆除できるヨ
タカラダニは無害ではありますが、やはり見ていてあまり気持ちいいものではありませんよね。どうしても駆除したいという人は、以下の方法で駆除することができます。
タカラダニは基本的に弱いため簡単に駆除することができます。
水で洗い流す
玄関先やアスファルトの上など、水を流せる場所であれば、ホースやジョウロを使って水で流すと簡単に洗い流すことができます。万が一潰してしまっても、水洗いすれば体液のシミ・汚れも落とすことができるので手軽です。
殺虫剤で駆除する
タカラダニを駆除するには、殺虫剤も有効です。スプレータイプが使いやすいですが、中でもピレスロイド系の殺虫剤がおすすめです。
ピレスロイドという殺虫成分は害虫に対し、「速効性」「忌避性(イヤがって近づかない)」効果があり、しかも人の体に入っても、速やかに分解し体外へ排出されるため、安全性が高い特徴があります。
※水槽の魚、ペットの昆虫類にも殺虫効果を発揮してしまうので、気をつけましょう!
粘着テープでそっとくっつける
布団や洗濯ものについたタカラダニをつぶさずに取り除くのは中々難しいです。ですが、潰すと赤いシミになる恐れがあるので、できれば潰さずに取り除きたいですよね。
そんな時はガムテープなどの粘着テープをそっとタカラダニに当てましょう。
※注意したいタカラダニ駆除法
「手で潰す」「ホウキで掃く」「ティッシュでつまむ」はNGです。タカラダニが潰れ赤い体液が吹き出してシミを作る恐れがあります。
タカラダニの発生させないためには?
できればタカラダニが増えないように予防しておきたいわ(汗
防水材は大変だけど、水を撒くくらいなら簡単ダネ!
1.水を撒いておく
タカラダニは発生時期の5月であっても、雨天時に這いまわるタカラダニが見られないことから、水に弱いと考えられています。
タカラダニが発生して欲しくないところには、適度に水をまいておくと効果があるかもしれません。
2.コケ・排水溝の汚れ・花粉を取り除く
タカラダニは花粉やコケをエサとしており、土壌で見かけられることもあるため、それらのエサを除去しておくことも有効かもしれません。砂の体積を防ぐことも大量発生を防ぐのに有効ということが分かっています。
※壁面に付着した花粉の有無によってタカラダニが減ったという結果はでなかったので、効果は不明です。
3.【最も有効】防水材を塗布する
屋上で、防水材の塗布によるタカラダニの忌避・殺虫効果をした実験では、防水材を塗布することで、明らかにタカラダニの忌避効果があることが分かりました。
5月のタカラダニ発生期に、建物屋上床面にウレタン塗膜防水材を塗布。無塗布面にくらべ、タカラダニの発生率は約半数ほどに減りました。
また、その効果は2年半を経過しても有効なことを確認し、防水材を塗布することが、タカラダニの発生の予防に、効果があることがわかりました。
なお、ウレタン防水材はダニが卵を産むと言われている、以下の部分に塗布することをお勧めします。
- コンクリートや壁の亀裂
- 壁の継ぎ目
参考:カベアナタカラダニ出現に対する床面防水材の抑制効果(大野 正彦他)
家の中への侵入を防ぐためには?
タカラダニが家の中に侵入するのを防ぐために、「残効性」の殺虫剤が有効です。タカラダニの侵入経路として考えられる
- 玄関先
- 窓際
- 換気扇
- 勝手口
などに、撒いておくとよいでしょう。ピレスロイド系では、フェノトリン含有の殺虫剤は残効性があるのでおすすめです。
また、ウレタン防水材の塗布は先述のことからも有効性が認められているので、問題ないようであれば、窓サッシや、付近の壁に塗っておくのもよいかもしれません。
まとめ
タカラダニの特徴と対策についてまとめてみましょう。
- 5~6月に発生。7月にはいなくなる。
- 人を刺すことはなく、無害。
- タカラダニは潰して皮膚につかないように注意。
- ウレタン防水材塗布が最も忌避効果あり。
- 残効性の殺虫剤・防水材で予防
タカラダニは、人に害をあたえるわけでなく、気にならなければ特に躍起になって駆除する必要はありません。
ただし、小さい子供にとってタカラダニの動きはアリと同じく興味の対象となります。見つけると好奇心でつぶしたくなってしまうことがあるので、タカラダニの体液付着による皮膚炎には注意をするようにしましょう。