「ダニ刺され」や「アレルギー」の他、食品や建物への加害、感染症など人間に害をなす害虫のダニ。地球上では4万種以上、5万種以上とも言われており、目に見えないだけで人とも密接な関係のある生き物です。
ダニの種類によって特徴や対策、症状、気をつけたいことは違ってきますし。気が付いていないだけで、もしかしたらダニの被害にあっている可能性もあります。ダニについて知ることで、適切な対策や被害を食い止めることができるかもしれません。今回は私たちの生活に密接した「ダニ」の種類や特徴について、ご紹介していきます。
ダニってそんなにたくさんいるの!?知らなかった!
人間の生活とも密接しているから、ダニによって対策も違ってくるヨ!
目次
ダニの生態と特徴
ダニは昆虫でなくクモの仲間
ダニは、節足動物に分類されるクモやサソリの仲間です。ダニは昆虫のように頭・胸・腹の区別がなく、それら一体となった胴部から8本の脚と前方に顎体部 (口器)がついています。
日本では約2000種、世界では約5000種以上も存在していると言われています。
目に見えないダニから見えるダニまで色々
体長は0.2㎜~0.7㎜程度で目に見えないほど小さいダニがほとんどですが、マダニのように吸血をすると2㎝以上もの大きさになる種類もいます。
地球上どこにでも生息するダニ
生息場所は様々で、屋内の食品中やホコリ、布団の中など生息するダニもいれば、屋外の水中、土壌、農作物の葉、茎、根につくダニ、人や動物、昆虫に寄生するダニもいます。
人間を刺咬・吸血するなど直接的な害を与えたり、大量発生し衛生上の問題を起こすこともあります。
屋内ダニの種類と特徴
●チリダニ(コナヒョウヒダニ、ヤケヒョウヒダニ)
引用:日革研究所
●チリダニの特徴
- アレルギーの原因となる
- ツメダニのエサになる
- 人は刺さない
- 一年中にみられる
- 高温多湿で増殖
家の中に生息し、一年中みられる最も多いダニです。主に「コナヒョウヒダニ」と「ヤケヒョウヒダニ」の2種類を総称しチリダニと呼ぶことがあります。チリダニの死骸とフンはアレルギーの抗原となり、気管支喘息や鼻炎などのアレルギー疾患の原因となります。体長はわずか0.2~0.4㎜で、絨毯や寝具、ソファなどあらゆる場所に生息し、人の髪の毛、フケ、アカなどをエサとします。温度20℃~30℃、湿度60~80%の高温多湿でどんどん増殖します。特に梅雨、秋雨時期は増殖しやすいです。ツメダニのエサになるので、チリダニが増えるとツメダニも増殖する傾向にあります。
アレルギーの原因はダニ?家の中の環境が引き起こすアレルギー性疾患
●ツメダニ
引用:日革研究所
●ツメダニの特徴
- 人を刺咬してかゆくする
- 刺されると激しいかゆみに襲われる
- チリダニ・ササラダニをエサにする
- チリダニが増えると一緒に増える
人を刺咬してかゆみの原因となるダニです。「フトツメダニ」「ミナミツメダニ」などの種類がいます。積極的に人を刺すことはありませんが、稀に人を刺し、2か所以上刺すことがあります。夜間寝ている時に刺されやすく、刺されると赤い発疹と共に激しいかゆみが10日ほど続きます。体長は0.3㎜~0.8㎜程度でチリダニよりも大型で、チリダニ・コナダニ・ササラダニ・チャタテムシなどをエサとして増殖します。チリダニが増殖すると合わせてツメダニも増殖するため、チリダニが増殖する6月ごろに刺咬被害が増える傾向にあります。カーペットや畳などに生息します。
●コナダニ
引用:日革研究所
●コナダニの特徴
- 繁殖力が旺盛で高温多湿で増殖するあらゆる食品に発生し加害する
- 小麦粉・お好み焼き粉で大量繁殖することがある
- 人は刺さない
- ツメダニのエサになる
コナダニ類には「ケナガコナダニ」という種類がおり、乾物、みそ、粉ミルク、小麦粉、菓子類などあらゆる食品に発生します。人を刺すことはありませんが、あらゆる食品に発生・加害し、農作物や医薬品にも害をもたらします。新築の家や畳に大量発生することもあり大量発生すると白く粉をふいたようになり肉眼でもみえます。体長は0.3~0.5㎜程で、人間の食べかすをエサとするため家の中のいたるところに生息します。ツメダニのエサとなるため、コナダニが増えるとツメダニの刺咬被害も増える傾向にあります。低温に強いため、湿度を下げると繁殖を抑えられます。
長期保存した粉類(小麦粉、お好み焼き粉)でコナダニが大量発生し、知らずに食べてしまいアナフェラキシーショックで病院に救急搬送されたり、最悪死に至るケースがあります。粉類はプラスチック容器などの密閉容器に入れ、10度以下となる冷蔵庫に保管し、早めに食べきるようにしましょう。
屋外ダニの種類と特徴
●マダニ
●マダニの特徴
- 感染症を媒介し死に至ることもあるため要注意
- 草むらや森や林、畑に生息
- 人を刺咬し吸血する
- 刺されると赤く広く炎症を起こす
マダニは屋外の草むら、森や林など野生動物が生息する場所に多く生息し、公園や河川敷、庭などの身近な場所にもみられるようになりました。肉眼でも確認できるほど大型のダニで、普段は3㎜程度の大きさですが、吸血すると数センチにまで膨れあがります。「キチマダニ」「フタトゲチマダニ」「ヤマトマダニ」など日本では47種が生息しています。マダニに刺されると皮膚が広範囲に赤くなりますが、かゆみがなく刺されたことに気が付かないこともあります。吸血中、無理にとろうとすると皮膚に口が残ってしまい化膿したり、マダニの体液を逆流させてしまうこともあるので、無理にとろうとせず、見つけたら皮膚科などの医療機関で処置してもらいましょう。特に3月~11月の春・秋に活動が活発になりますが、冬に活動する種類もいます。
マダニが媒介する感染症
- 日本紅斑熱(リケッチア)
- Q熱(リケッチア)
- ライム病(スピロヘータ)
- ボレリア症(細菌)
- 野兎病(細菌)
- 重症熱性血小板減少症候群 SFTS(フレボウイルス)
- ダニ媒介性脳炎 (フラビウイルス)など
マダニに刺されると日本紅斑熱・Q熱・ライム病などの感染症を引き起こす可能性があり、重症化しやすく、最悪死に至ることもあります。近年では、マダニによって媒介される重症熱性血小板減少症候群(SFTS)が問題となっています。SFTSウイルスを保有したマダニに刺されることによって感染し、感染すると6日から2週間ほどの潜伏期間の後、発熱・食欲低下・嘔吐・下痢などの症状が現れ、けいれん・こん睡など重症化、死亡することもあります。有効な薬剤やワクチンがないため、マダニに刺されないように予防することが大切です。
マダニに刺されないための予防しよう
- 野外では帽子・長袖・長ズボンを着用。軍手・靴下・タオルで肌の露出を少なくする
- 野山や林に立ち入った時は、玄関で上着や作業着を脱ぎ、家の中に持ち込まない
- 屋外活動後はすぐに入浴し、ダニが付いていないか確認する
- マダニが付着していたらガムテープで取り除く
- マダニに対する忌避剤(虫よけ剤)を使用する※マダニへの有効成分としてディート、イカリジンが有効。購入する際は市販薬にこれらの有効成分が含有されているか確認しましょう。
●イエダニ
引用:株式会社三共リメイク
●イエダニの特徴
- 主にネズミに寄生する
- ネズミが死ぬと人を刺咬し吸血する
- 刺されると重大な感染症にかかる場合がある
イエダニはネズミや鳥に寄生し、吸血するダニです。体長は0.7㎜程度で、ネズミがたくさん生息している家でよく見られ、巣内で大量発生したり、宿主のネズミがいなくなると新たな寄生先を求めて人間を吸血することがあります。夜間に活動し、脇やお腹、陰部や太股など柔らかいところを刺し、刺されると赤い発疹と共に、かなりのかゆみが生じます。病原菌やウイルスを媒介することでも知られており、重大な感染症に感染する恐れもあります。6~9月の夏・秋に最も多くなり被害も増えますが、冬でも刺されることがあります。
ダニの被害
チリダニはアレルギー疾患の原因となります。
コナヒョウヒダニやヤケヒョウヒダニなどの室内塵性チリダニ類は、その死骸やフンがアレルギー疾患のアレルゲンとなり、アレルギー性喘息やアトピー性皮膚炎の約80%はダニ・ハウスダストが原因と言われています。高温多湿の条件がそろうと急激に増殖するため、適度に掃除機をかけ、ホコリや食べかす、髪の毛やフケ、アカなどを取り除き、ダニを増やさないようにすることが大切です。
アレルギーの原因はダニ?家の中の環境が引き起こすアレルギー性疾患
ツメダニは屋内ダニで唯一人を刺します。
屋内ダニの中で、人を刺すのはツメダニだけです。ツメダニは積極的に人を刺すわけではないですが、刺されると、赤い発疹と共に、猛烈なかゆさが10日ほど続き、痕が残ることがあります。夜間に活動し、服の中に侵入して太もも、お腹、脇、二の腕など柔らかい場所を刺すため、寝ている時に刺されたらツメダニが原因かもしれません。ノミは飛び跳ねて刺してまわるため刺し痕が離れており、ツメダニの場合、刺し痕が2か所以上で近接しているのが特徴です。
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マダニ・イエダニは吸血し、感染症を媒介します。
マダニ、イエダニは動物や人に寄生し吸血します。ウイルスや病原菌を媒介し、感染症を引き起こすことがあるので、「刺された」「体調が悪い」などが分かったら、すぐに医療機関を受診するようにしましょう。マダニは刺されないように予防をするのが一番の対策です。イエダニはネズミに寄生するので、ネズミを退治しない限り被害は増え続けます。
まだまだいるダニの種類
ダニは先に紹介したダニだけでなく、まだまだ多くのダニが存在します。身近なものから少しだけご紹介していきます。
●ワクモ
主に鳥類に寄生するダニの一種です。体長は0.6~1.0㎜程でイエダニにとてもよく似ており、人を刺すこともあります。4~7月、9月頃に鳥の巣などからはい出し、吸血することがあります。
●トリサシダニ
ワクモと同様に鳥類に寄生するダニで、ワクモ・イエダニに似ています。体長は約0.6㎜程で、鳥の巣からはい出し人を吸血します。6~7月に多くみられ、刺されると激しいかゆみがみられます。鳥類のペットから移動して人を刺すこともあります。
●ヒゼンダニ
ヒゼンダニは体長0.4㎜程のダニで、人の肌に寄生し疥癬(かいせん)という皮膚病を引き起こします。疥癬は激しいかゆみがあり、人から人へ感染します。ヒゼンダニが皮膚の表面と角質層との間に潜り込み、トンネルを掘るようにして進んで卵を産み付けていくことで発症します。1日に2~3個の卵を産み付け、卵は3~4日ほどで孵化し、どんどん増えていきます。
●ニキビダニ
ヒゼンダニと同様に人に寄生するダニの一種で、体長は0.1~0.4㎜ほどです。すべての人間に寄生していると言われており、特に顔などを中心に生息しています。人と共存する無害のダニで、毛穴(毛包)に生息していることから毛包虫ともいわれています。
●タカラダニ
真っ赤な体が特徴のダニで、コンクリートや階段、ベランダや壁などに発生します。4~6月の新緑時期に大量発生しますが、その生態はよくわかっていません。人を刺したり、危害を加えたりするような報告はありません。
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●ツツガムシ
日本全国に広く生息し、ネズミなどの哺乳類に寄生するダニの一種です。マダニやイエダニと同様に、人を刺し吸血します。ツツガムシ類に河原や草原などの開けた場所に生息しています。幼虫の間のみ人を刺すことが知られていますが、ツツガムシ病リケッチアを保菌しているため、ツツガムシに刺されるとツツガムシ病に感染します。刺された部分が赤く発疹するほか、発熱・発疹が見られます。重症化し、死にいたる場合もあるので、刺された場合医療機関を受診しましょう。
まとめ
今回はダニの生態や種類、特徴についてお伝えしました。一口にダニといっても本当に多くのダニが存在しており、その予防や対策なども異なってきます。それぞれのシーンや状況に応じて対策をし、ダニとうまく付き合っていくようにしましょう。
参考: